麻生飯塚ゴルフ倶楽部では、倶楽部競技から退いていた年配プレーヤーの競技復帰など、効果が表れている。
その内容を坂本修一ハンディキャップ委員長、箕田政人コンペティション委員長、
藤井久隆支配人、原幸志運営業務課兼営業部課長代理に聞いた。
─ 麻生飯塚ゴルフ倶楽部では2014年に九州地区の先陣を切ってハンディキャップ(以下HDCP)インデックスを導入しています。まず導入に至った経緯をお聞かせください。
藤井:新システムがスタートする1 年半ほど前だったと思いますが、JGAの役員の方から「今度、こういうことを始める」とうかがったのがきっかけでした。それを坂本HDCP委員長に伝え、それぞれ勉強した結果、よさそうなシステムだということが理解できたのであまり引っ掛かることなく導入することを決められました。
坂本:JGAの講習会等を通じてグローバル化が当たり前の世界になっている中でこのシステムが世界60カ国以上で採用されていること、老若男女の区分なく公平にゴルフ競技を楽しめる仕組みになっていること、また、ゴルフを楽しむ人を少しでも増やしたいという意味があることなどを知り、当倶楽部は積極的に取り組むべきだと考えました。早速、2013年10月に当倶楽部の理事会で採用することを決めていただきました。
─ 採用決定後にHDCP委員会ではどのような普及活動に取り組みましたか。
坂本:システムが大きく変わりますし、聞き慣れない言葉もありますから、まずはHDCP委員がシステムを十分に理解する必要があると感じ、勉強会を始めました。次に、会員の皆様が混乱しないよう具体的にどのようにして進めるべきか、いろいろな場面を会員の立場になって想定し、何度となく委員会を開催しました。その結果、新しい言葉の説明や、このシステムを当倶楽部に当てはめるとどうなるかの例を示したものをHDCP委員会で作成し、倶楽部会報と掲示板に掲載することにしました。特に、会員はHDCPインデックスを取得し、プレーするコースとティーの位置でHDCPが変わることや、当倶楽部は27ホールありますのでどのコースを回っても同時に競技できることを念入りに説明しました。
─ コンペティション委員会との連携はいかがでしたか。
箕田:坂本HDCP委員長にコンペティション委員会に来ていただいて、新システムのことを説明していただきました。すぐには内容を理解できませんでしたし、反対意見も少しありましたが坂本さんの熱意を感じたこともあり「競技で採用しよう」ということを決めました。
坂本:当倶楽部の競技日程は 4 月から新年度になりますので、それに合わせて2014年 4 月から新システムに移行することにしました。初年度は慣れないことも考慮して競技種目やティーの選択を限定していましたが、2 年目からは各種選手権競技や理事長杯、
キャプテン杯などの主要競技を除き、競技者がティーを選択できるようにしています。
箕田:当倶楽部にはそれぞれ 9 ホールのブルー、グリーン、ホワイトの 3コースがあります。月例などではすべてのコースを使用しますのでプレーするコースによって 3 つ(ブルー×グリーン、グリーン×ホワイト、ホワイト×ブルー)に分けて競技をするしかありませんでした。つまり、1 回の競技で優勝者が3人いたわけです。それが新システムを採用したことで一本化することができました。
─ スコアカードに工夫を凝らしたそうですね。
坂本:はい。提 出 用のスコアカードにHDCPインデックス、プレーしたコース、コースHDCPを記入する欄を設けました。(スコア記入用の)テーブルの横にメンバーのHDCPインデックス、回ったコースのHDCP換算表が掲示されていますので確認は容易にできます。
─ 自ら記入することでプレーヤー各々のHDCPインデックスへの理解度が深まることが期待できそうです。
坂本:そう思います。最初は「面倒だ」という声もありましたが、日を追うごとに収まり、今では全くそういう声はありません。
─ 新システム導入後、倶楽部競技優勝者の顔ぶれに変化はありましたか。
坂本:以前はHDCP10前後の方が中心でしたが、今はまんべんなく分布しており、誰にでも優勝する機会が出てきたと感じています。
箕田:優勝者や上位入賞者が偏るとそれ以外の方の競技への参加意欲がそがれますから、コンペティション委員会としても多くの方のチャンスが出てきたことはありがたいですね。
原:当倶楽部競技のローカル的なことを補足させていただきますと、HDCPインデックスは毎月1日の更新ですが、競技でネット60台が出ると同じ月内であっても次の競技にはトレンドHDCPで出場していただくということを実施しています。
藤井:ほぼ毎週何かしら競技がありますからね。作業する事務方は大変ですが、これも幅広い方にチャンスが回るようにということです。
原:会員様も楽しんでいただいていると感じています。
坂本:もうひとつ付け加えますと、主 要 競 技で優勝しますとその年度内は無条件でクラブ競技でのHDCPインデックスをひとつ下げるということもやっています。主要競技で勝つことは名誉ですからね。
─ 競技参加者の人数や年齢層に変化はありましたか。
箕田:いわゆる高齢者といわれる方が競技に戻ってきています。新システムになってプレーしやすくなったという理 由が多いようです。
─ 競技をあきらめていた方がもう一度やってみようと?
箕田:そうです。たとえばブルーの4番ホールはティーショットが池を越えるパー 4 ですが、レギュラーティーからですとキャリーで150ヤードいかないと池を越えません。私自身もそうですが若いころは向こう岸までいっていたのが、力が落ちてくると越えないわけです。そうなると面白くない。ところが、ティーの選択が可能になるとフロントティーから打てますから、それなら越えていける。じゃあ、もう一回やってみようかということになるわけです。
藤井:それこそが「老若男女の区分なくゴルフが楽しめる」というこのシステムの主旨でしょうからね。
原:ティーの選 択ができるようになったことで、私のように競技の準備をする立場の人間も楽になりました。以前はティーを前に設定すると競技志向の方からは「こんなに前から回りたくない」と言われましたし、後ろにすれば今度は一般の方から「こんなに遠いところからやりたくない」と言われていました。競技の時、どこにティーをセットするかで本当に頭を悩ませていました。
─どちらにしても文句を言われていたわけですね。
原:つらい立場でした(笑)。
─ 倶楽部HDCPでいわゆるシングルだった方の中には、HDCPインデックスで2 ケタになった方もいると思います。
そのような方の反応はいかがですか。
箕田:HDCPボードも廃止しましたから、寂しがっていた“前シングル”がたくさんいました。「オレはここまでいったんだ」と証明するものがなくなったわけですから。そこで、今年10月から独自に『ベストHDCPインデックス証明書』を希望者に有料で発行することにしました。
坂本:表面に自己ベストのHDCPインデックスや顔写真、裏面には倶楽部競技の優勝歴やベストスコアを出した時のスコアカードなどを印字したカードです。
藤井:2人の委員長は「普及させたい」という思いが強いですから、いろんな知恵が浮かんでくるんですよ。2 人が強いリーダーシップと熱意で引っ張ってくれたからこそ、当倶楽部で新システムの普及が進んだのだと思います。
─ 課題や問題点、あるいはJGAへの要望などはありますか。
藤井:分厚い解説書を読むだけではなかなか頭に入ってこないですから、もっと分かりやすいものがあったほうがいいと感じています。
坂本:導入までの具体的な手順、たとえばここから始めるにはいつまでにどういうことを決めなさいとか、いつからいつまでのメンバーのデータを集めてコンピューターに入力しなさいというようなガイドラインをつくっていただいたほうがまだ導入していない倶楽部も入りやすくなるのではないでしょうか。
藤井:それぞれの倶楽部で事情もあるでしょうから無理強いはできないと思いますが、「うちはこうしています」ということはお話ししています。「やるまでは難しそうに感じるけど、やってしまえば楽だよ」と(笑)。
坂本:JGAは早く導 入するような働きかけを少し強力に進める時期に差し掛かっているような気がします。採用している倶楽部名をJGAジャーナルに掲載する、あるいは旧来の倶楽部HDCPを認めないなどしてもいいのではないでしょうか。取り入れて
いない倶楽部について、JGAから直接各倶楽部に出向いて個別に指導することも考えてはどうかとも思います。また、HDCPインデックスによる競技をもっと増やしていくことも普及につながるのではないでしょうか。
JGA会報「JGA GOLF JOURNAL100号より転載」